カテゴリ:DV



政治・行政 · 3月 07日, 2026年
DVやストーカー被害者の保護を目的として設けられている「住民基本台帳事務における支援措置」は平成16年7月に施行された、住所情報の取得を制限することにより、被害者の安全を確保する制度である。被害者が加害者から所在を知られることなく生活を再建するための制度的措置として、多くの自治体において運用されており、警視庁の資料によれば、当該制度の目的を“DV等の加害者が、住民票の写し等の交付等を不当に利用して、被害者の住所を探索することを防止し、被害者の保護を図る。”としている。(警視庁:住民基本台帳制度におけるDV等被害者への支援措置) 要約すれば、この制度は、住民基本台帳法 に基づき、住民票の写しや戸籍附票などの交付を制限することによって、第三者が住所情報を取得することを防ぐ仕組みとなっている。加害者による所在探索を防止することを主な目的としており、DVやストーカー被害者の安全確保において重要な役割を果たしてきた制度である。 しかしながら、行政制度は必ずしも単一の制度によって構成されているわけではない。住民情報を扱う制度のほかにも、税務、土地管理、登記など、複数の制度が並行して存在しており、それぞれ異なる目的と根拠法令のもとで運用されている。このため、ある制度において住所情報の取得が制限されていたとしても、別の制度を通じて同様の情報が推測される可能性が生じる場合がある。 その典型例としてしばしば指摘されるのが、自治体が保有している土地台帳の閲覧制度である。土地台帳は、本来、固定資産税の課税事務や土地の管理、行政上の基礎資料として整備されてきた行政文書であり、自治体が土地の状況や所有関係を把握するための重要な資料として長く活用されてきたものであり、かつては住民サービスの一環として、比較的自由に閲覧できる運用が広く行われており、地域住民や事業者が土地の所在や所有者に関する情報を確認するための手段として利用されてきた。土地の位置や所有関係を把握できる行政台帳として、地域社会の中で一定の役割を果たしてきた経緯があり、土地取引や地域の土地利用の把握などにも活用されてきた側面がある。 しかし近年、個人情報保護の意識の高まりやDV・ストーカー被害への社会的認識の深化に伴い、こうした行政台帳の閲覧制度については全国的に見直しが進んでいる。固定資産課税台帳については閲覧できる者を納税義務者や利害関係人に限定する運用が一般的となり、土地台帳そのものについても閲覧制度を廃止または大幅に制限する自治体が増えている。 それにもかかわらず、自治体によっては過去の制度運用がそのまま残されている場合もあり、土地台帳の閲覧が比較的容易に行える状況が存在することも指摘されている。行政制度の運用は自治体ごとに一定の裁量があるため、同じ県内であっても制度の取り扱いに差が生じることがある。 実際、長崎県内においても、依然として土地台帳の「自由閲覧」が可能な自治体が存在するとされる。旧来の行政慣行が継続している結果として閲覧制度が維持されている場合もあり、自治体ごとの制度運用の差が明らかになりつつある。 このような状況において問題となるのは、DV支援措置の趣旨と土地台帳閲覧制度との関係である。住民基本台帳事務において住所情報の取得が制限されていたとしても、別制度の行政資料から土地所有者の情報や所在地が推測される可能性があるとすれば、被害者保護制度の実効性に影響を与えることになりかねない。 行政制度はそれぞれ異なる目的のもとに設計されている。住民基本台帳制度は住民情報の管理を目的とし、税務制度は課税の公平性を確保するために整備されている。土地台帳もまた、土地の所在や所有関係を把握するための行政資料として整備されてきたものであり、本来は被害者保護を直接の目的とした制度ではない。 しかし、行政が保有する情報が多様化し、複数の制度が相互に関連する現代社会においては、制度ごとに独立した情報管理だけでは十分とは言えない場合がある。特にDVやストーカー被害のように、住所情報の秘匿が被害者の安全確保に直結する問題においては、行政制度全体としての整合性が強く求められる。 実際、全国の自治体では個人情報保護の強化に伴い、行政台帳の閲覧制度を見直す動きが広がっている。かつては住民サービスの一環として広く公開されていた行政資料についても、社会状況の変化に応じて制度の再検討が進められているのである。 被害者保護と行政情報公開のバランスは、決して容易に整理できる問題ではない。土地情報の公開は、不動産取引の安全や社会経済活動の透明性を確保するうえで一定の役割を担っている。一方で、DVやストーカー被害者の安全確保は極めて重要な公共課題であり、行政制度がその目的を損なうような状況が生じることは避けなければならない。 個人情報保護および人権保護の観点からみれば、土地台帳の自由閲覧という旧来の行政慣行は、現代の被害者保護制度と必ずしも整合しているとは言い難い。制度が成立した時代の社会状況と、現在の社会が直面している課題との間には、大きな隔たりが存在している可能性もある。 DV支援措置の趣旨が「住所の秘匿による安全確保」にある以上、関連する行政情報の取り扱いについても制度間の整合性を確保することが求められる。行政制度の透明性と被害者保護という二つの価値をどのように調和させるのかは、現代の地方行政にとって重要な課題の一つである。 土地台帳閲覧制度の在り方は、単なる行政慣行の問題ではなく、個人情報保護と人権保護という現代社会の基本原則に関わる問題でもある。自治体における制度運用の実態を踏まえながら、行政情報公開と被害者保護の双方を実現する制度設計について、改めて検討が求められているのではないだろうか。 発行元:長崎通信社 検証元:公論府
社会・県民 · 1月 19日, 2026年
諫早市は、配偶者や身近な人からの暴力(DV)について理解を深め、防止につなげることを目的とした「DV防止講演会」を、令和8年1月25日(日曜日)に開催する。 講演会のテーマは「みんなが笑顔で暮らすために~身近にある暴力・子どもへの影響~」。...