⦅みえない“手間”を減らす行政へ⦆
大村市は、陸上自衛隊や航空自衛隊の関連施設を有し、多くの自衛隊員やその家族が暮らす「自衛隊の街」である。また、長崎空港を有し、交通の利便性にも恵まれた県内有数の拠点都市であるともいえる。
そのような性格を有する大村市だからこそ、行政サービスは定住者だけでなく、転勤者や移住者の視点からも考える必要がある。その一つが、公共料金の支払い方法である。
普段、水道料金などの公共料金の支払い方法を意識する機会は少ない。しかし、大村市の人口や経済を大きく支える組織である自衛隊、自衛隊員やその家族のように転勤を伴う生活を送る人々にとっては、決して小さな問題ではないということは容易に想像がつく。
これは“自衛隊”というものを政治や思想的な物指しで述べるものではなく、自衛隊やその家族を“一市民”としてみたものである。
転入時には、住民票の異動、子どもの転校、各種契約の変更、医療機関の確認など、多くの手続きを短期間で行わなければならない。その中で、公共料金の口座振替のために新たな金融機関口座の開設が必要となれば、それはその方々にとっては、一つの負担となる。
行政側や第三者から見れば小さな手続きかもしれない。しかし、転入者から見れば数ある手続きの一つであり、積み重なれば大きな負担となる。これはまさに「見えない手間」である。
特に自衛隊員は全国各地への異動があるため、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行といった全国規模の金融機関を利用している人も少なくない。転勤先が変わっても同じ口座を利用できることは、大きな利点である。
しかし、自治体によっては公共料金の口座振替が地域金融機関中心となっており、普段利用している口座が使えない場合もある。その結果、公共料金のためだけに新しい口座を開設しなければならないケースも生じる。
もちろん、地域金融機関は地域経済を支える重要な存在である。その役割を否定するものではない。しかし、市民サービスの観点から見れば、利用者の選択肢を広げることもまた重要ではないだろうか。
さらに、この問題は自衛隊員だけのものではない。
近年、国は地方創生の一環として二拠点居住を推進している。都市部と地方を行き来しながら生活する人や、テレワークを活用して地方に居住する人も増えつつある。
また、企業の転勤や移住促進施策によって、地域を越えて生活する人々も増加している。
かつては、一つの地域に長く住み続けることが一般的であった。しかし現在は、人の移動が当たり前の時代になりつつある。
そのような時代においては、「地域の金融機関を利用していること」を前提とした制度よりも、「どこに住んでいても利用しやすい制度」が求められる。
国は行政DXを推進し、自治体にも住民負担の軽減を求めている。書かない窓口やオンライン申請、キャッシュレス決済などが広がる中、公共料金の支払い方法についても見直しを検討する余地があるのではないだろうか。
メガバンクへの対応やインターネット銀行への対応、オンラインでの口座振替手続きなどが実現すれば、市民の利便性向上につながる可能性がある。
これは単なる収納事務の話ではない。市民が感じる小さな不便を減らし、暮らしやすい街をつくるための取り組みである。
人口減少が進む中、自治体には「選ばれる街」になることが求められている。道路や施設の整備も重要だが、日常生活の中で感じる不便を解消することも同じくらい重要である。
大村市は、自衛隊とともに発展してきた街である。だからこそ、自衛隊員やその家族が感じる負担や不便に目を向けることは、市民サービス向上の観点からも意義が大きい。
公共料金の支払い方法は、一見すると小さなテーマに見える。しかし、その背景には転勤者支援、移住促進、二拠点居住、行政DX、人口政策といった様々な課題が関わっている。
公共料金の支払い方法は単なる収納事務ではない。それは市民目線の行政を実現するための基盤であり、「見えない手間を減らす行政」を象徴する取り組みの一つなのである。
自衛隊の街・大村市だからこそ、多様な人々が安心して暮らせる環境づくりを進めていくことが期待される。小さな不便を見逃さず、一つひとつ改善していくことが、これからの大村市の“潜在的”な魅力向上につながるのではないだろうか。
