発行:長崎通信社
昨今、日本では、社会貢献や地域課題の解決に取り組む市民活動が広く行われ、また若者・学生文化・学校文化のひとつとしても普及しています。
その中でよく混同されるのが「NPO」と「NPO法人」という言葉です。両者は似ているようで、実は位置づけや法的取り扱いが大きく異なります。本記事では、その違いを専門的かつ分かりやすく解説します。
NPOとは「非営利の活動」を表す広い概念
NPO(Non-Profit Organization)は、「非営利の目的で社会的活動」を行う団体・組織を指す広義的な概念です。
また、NPOを方針として活動をする団体や企業の組織形態として、NPO団体という場合がありますが、「NPO法人」と差別化するためNPO法人以外を「NPO団体」と呼ぶ場合もあります。
NPOの範囲(領域)
日本の法律では「NPO」という語に明確な定義・取り扱いは存在しませんが、学術的・一般通念上は定義が存在しているといえます。
NPOの範囲(領域)には、以下のような団体も広く含まれると考えられます。
・ボランティア団体、ボランティアサークル
・大学のサークル、趣味の同好会
・町内会、自治会
・業界団体、研究会、学術団体
・市民団体
・地域の自主防災組織
・任意団体として活動するグループ
・有志による活動団体
・一時的または恒久的なプロジェクト型団体
これらは、法律上、団体の形態を「任意団体」、方針が「非営利(NPO)」として扱われ、民法上は「権利能力なき社団」と呼ばれ、原則として団体(格)が独立した権利義務の主体とは扱われません。そのため、契約や財産の所有は代表者(代表格)や構成員の名義で行うのが原則となります。
任意団体(NPO団体含む)は憲法で保障されている
日本国憲法21条1項
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
この「結社の自由」により、市民が自由に集まり、団体をつくり、活動する自由は憲法が保障する基本的人権であり、原則として任意団体は、国家や政府・自治体などに許可を求めずに設立・活動できる権利を持っています。
任意団体(NPO団体含む)の特徴
・会費や寄付の受け取りは可能
・団体名義の契約・銀行口座開設は制限あり
・責任が代表者個人に及ぶ場合がある
・組織運営ルール・定款・規約は自主的に決めるが、任意である(ルール・定款・規約が定めてある場合は、社会通念上尊重される。)
つまり、NPOは「社会貢献活動の総称」であって、また、団体の資格を意味するものではなく、団体の主旨や方針として捉えられます。
NPO法人とは「特定非営利活動促進法」に基づく法人(格)
NPO法人(特定非営利活動法人)は、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づき、法人格を取得した団体を指し、当該法人が目的とする事業や活動が主となるため、NPOが広範囲・横断的な活動を取り扱えるのに比べると狭義的概念といえます。
法的に明確に規定された組織
NPO法人になるには、所轄庁(都道府県または政令市)から認証を受け、法人として設立登記を行う必要があります。
NPO法人の特徴
・基本的に団体名義で契約行為が可能
・団体名義で銀行口座を開設
・不動産の取得・賃貸借契約が容易
・助成金・委託事業の応募がしやすい
・法人としての社会的信用が高まる
・責任が団体に帰属し、個人責任が軽減される
NPO法人が求められる法的義務
・毎事業年度の事業報告書・収支報告書の提出
・通常総会の開催
・定款の整備
・会計帳簿の作成・公開
・所轄庁による監督(改善命令・認証取消の可能性)
「社会のために活動する主体」であることと同時に、透明性と説明責任が求められる点が任意団体との大きな違いです。
NPOとNPO法人は目的が同じでも範囲や“法的取り扱い”が異なる
NPOもNPO法人も目的は、社会貢献・公益性であるが、どちらも営利を目的としない点は同じです。
しかし、法的な観点からは以下の違いがあるといえます
(1)NPO(任意団体) NPO法人
法的取扱:任意団体
公的保障:憲法・民法
契約主体:代表者個人。ただし、契約形態、その団体の信用や形態に応じて団体名義で可能
銀行口座 個人名義が中心。ただし、契約形態、その団体の信用や形態に応じて団体名義で可能
責任区分:代表者が主体となる。ただし、運営形態、その団体の規約やルールに応じて変わる
会計・運営:自主ルールでよい 法定義務(公開・報告)がある
社会的信用:団体次第
(2)NPO法人
法的取扱:法人格あり
公的保障:特定非営利活動促進法(NPO法)
契約主体:団体として契約可能
銀行口座:団体名義
責任区分:法人が主体となる
会計・運営:法定義務(公開・報告)あり
社会的信用:公的法人
どちらが良いのか?活動形態と目的で決まる
NPO(任意団体)が向いている場合
・柔軟性・活動の広域性を重視
・人中心の活動
・契約や不動産の取り扱いが不要
・立ち上げを簡便にしたい
NPO法人が向いている場合
・行政・企業と連携する
・組織性・活動の専門性を重視
・団体中心の活動
・助成金や委託事業を受けたい
・寄付を安定的に集めたい
・不動産・設備を扱う
「大きな公的役割」や「安定した事業」を目指すなら、NPO法人化は有力な選択肢となります。
